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Last updated: 2003.08.13  

霞ヶ関流考え方と温暖化政策

日本では,政策策定はもっぱら役所の仕事です.今回は,普通の企業などの意志決定の考え方とは異なる「役所流」の考え方を, わたしなりに考察してみます.

ふたつ例を考えてみましょう.

まず,エネルギー特別会計の改訂が,2003 年度から行われます.これには,かなり経済産業省の「思惑」が, その裏にあるのは間違いがありません(その戦略性には感嘆(?)します). 実際,いくつも思いつくものがありますが(ここでは省略します),その中であまり指摘されていない (おそらく最大の)ものとは何でしょうか?

わたしは,それは「温暖化問題」に,経済産業省が大きく権限を拡大した,ということだと思っています. いままで,外から見る限りは,経済産業省ももちろん,温暖化問題に大きく関わってきました. しかし,それはあくまで「エネルギー」などを通して,といういわば「間接的」関与でした. 温暖化問題は一義的には「環境」問題であるため,基本法的には環境省が主管すべきことであります. 「縦割り」の壁は,いかに強力な省であっても,乗り越えられない法的な壁であったわけです.

それが,エネルギー特会の権限のほんの一部を環境省と共管することで,その壁を越えることができるようになるわけです. たとえば,米国 SO2 排出権取引は,EPA(環境保護庁)の担当で, DOE(エネルギー省)の担当ではないのですが,日本の GHG 排出権取引が実施される場合, 経済産業省は大手を振るって 主管官庁となることができます.

第二の点は,役所は,なんらかのオーソライゼーションを必要とし,それが堅固なハイレベルなものであればあるほど, きわめて強力かつ迅速に行動することができます.オーソライゼーションとは,それが審議会であったり,閣議であったり, 国会であったりするわけですね(逆にそれまでは明確な意思表示をできるだけ避けようとします.減点主義の弊害ですね).

温暖化の世界の例では,たとえば大きなものでは,批准に関する「国会決議」であり, 国内対策面では「地球温暖化対策推進大綱」となります.思い起こしてみると,マラケシュまで批准するかどうか, その意向さえ きわめて厚いオブラートで包んだような言い方しかしなかった政府が,マラケシュ以降, (経団連の反対表明にもかかわらず)一変してきわめて迅速に,一気に批准まで持っていったことは,記憶に新しいでしょう.

大綱は,「ステップバイステップ」アプローチを設定し,閣議決定しています(正確には地球温暖化対策推進本部決定ですが, これは閣議決定と同じようなものです).このアプローチは,第 2 ステップである 2005 年までは たいしたことはしない, ということよりも,「2005 年になれば 有無を言わさず実施しますよ!」というきわめて強いメッセージ(意思表示)であると, わたしは解釈しています.

2004 年一年間で,包括的政策審査,2005 年以降の政策策定,およびその実施のための制度的準備, といった作業ができるためには,2003 年の準備と同時に,2004 年に動き出したら,一気呵成に走り抜けるでしょう. 2004 年には,外部から口を挟む余地や時間はほとんどない,と思った方がいいかもしれません.

言い換えると,民間企業サイドは,今のうちに,明確で,かつかなり具体的な意思表示を行わなければ,間に合わないでしょう. すでに時計はセットされ,動き出しています.

以上は,わたしの個人的な解釈かもしれません.しかし,ある程度の真実があるとすれば, このような役所的な考え方を知っておくことも必要かと思っています.みなさんは,ご自分の経験に照らして, 考えてみられるといいかと思います.そして,それを戦略設計に活かしてください.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2003年 3月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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