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Last updated: 2005.10.29 

COP 10 の評価

2004年末に行われたCOP 10の結果をどう読むべきか?という点を考えてみましょう.

焦点のひとつとして,将来の枠組みに関する「政府専門家セミナー」の開催が挙げられます.メディア報道では,将来枠組みの交渉へのリンケージをつけない...という結論が出たこと,また米国の態度があいかわらずであることに対する失望感も大きかったようです.

わたし個人の評価では,むしろ第一歩(半歩かもしれませんが)を,特に途上国のアルゼンチンのイニシアティブで踏み出したことの意義が大きく,けっして過小評価すべきでないと考えています.そもそも,途上国が数値目標のような追加的なコミットメントを負うことは,きわめて強い反発があります.米国は枠の外ですし,他の先進国も京都議定書を遵守できるかどうかまだわからないわけです.したがって,彼らが自主的に目標などを受け入れるとすれば,よほどCDMから市場のメリットを感じたか,あるいはほぼ先進国になった国が仕方がないと思うような場合でしょうか.けっして一朝一夕に進むような問題ではありません.

一方で,米国の話も,ブッシュ政権が継続することになり,ブッシュ大統領が京都議定書(=ゴアの議定書)を「嫌い」なことははっきりしていますので,あと4年間は進展が望むべくもないことはほぼ明らかかと思っています.

ちなみに,京都議定書に2005年中に検討をはじめなければならないとされているものは,上記の「将来枠組み」ではなく,先進国の第2期の数値目標の点です.この点は日本では誤解されているケースが多いので注意しましょう.

COP 10は,AdaptationのCOPと呼ばれることもあります.五カ年作業計画が採択されました.Adaptationとは気候変動への適応措置のことです.地球温暖化によって,海面上昇や各種異常気象現象に基づくさまざまな影響が予見されますが,それらの影響にどう適応するか?という点ですね.GHG排出削減をmitigation(緩和措置)と呼び,京都議定書をはじめ緩和措置が重視されていたなかで,新たに適応措置も重視されるようになってきたわけです.

もっとも,適応措置で実際にどのようなことを行うのか?という点で,これからの課題は大きいでしょう.たとえば熱帯性低気圧への対処というのは,「いずれにせよ」行われるわけで,理論的には温暖化による「追加的な」部分に対する措置に資金を投入するようなことを行うべきでしょうが,そこにはCDMの追加性よりもさらにむつかしそうな議論が予見されます.

COP 11は,COP/MOP 1(議定書の第一回締約国会合)となります.そこでは,JIの第6条監督委員会,(目標などに関する)遵守委員会などが設置されます.ただCOP 10では,これらの準備でとくに進展したということはありませんでした.

CDMに関しても,とくに目立った決定がなされたということはありませんでした.本当は,途上国がCERを移転できるか?などの点を明確化してもらいたかったのですが,それも議論されることがなく終わってしまいました.6月末完成予定のInternational Transaction Logのデザインをどうするのか,心配されます.CDMはみなさんの期待が大きい反面,現行の運用に関する不満が噴出した形となっていました.懸念されるのは,政治的色彩や非論理的な認識が制度の運用に散見される点です.初期の混乱だった...というようになればいいのですが.

その他,他のETSとのリンケージの話を,欧州委員会がサイドイベントで発表していたこと,EUがロシアのインベントリー整備に協力していることなどが確認できたことは注目に値する事項でした.

政治的な話ではなく,実務的な点に関して,GHGユニット,レジストリー系の話はかなり詳細まで決まっていますので,これでビジネスを行う人々は,一度,ご自分の理解が正しいかどうか(勝手な思い込みをしていないかどうか),マラケシュアコードやそれ以降のSBSTA決定をチェックしておいた方がいいでしょう.たとえば,2013年の猶予期間に2013年のAAUを購入して第一期の目標には使えるかどうか,CERのビンテージの定義,JIの参加用件など,みなさんはご存知でしょうか?

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2005年2月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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