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Last updated: 2005.10.29 

モントリオール・マンデート?

今回は,間近に迫ったCOP 11 - COP/MOP 1で,どのような最終アウトプットが出てくるかを考えてみましょう.

最大のポイントは,当然,COP 7で採択されたマラケシュアコードが,そのままの形で決議されることですが,これはまず問題はないでしょう.

制度的な点では,第6条監督委員会,遵守委員会が設立され,おそらくそれらの第一回目の会合が行われるのではないかと思われます.

ふつう,COPとくに今回のようにマイルストーンとなるCOPにおいては,それらのスケジュールされたイシュー以外に,なんらかの決議が採択されるという傾向にあります.ホスト国としても,メンツにかけて,モントリオールの名前を冠したものが欲しいでしょう.単なる宣言よりも実効性があるものが望まれます.

実際,気候変動枠組条約発効後,最初のCOPであるCOP 1においては,「ベルリン・マンデート」が合意されました.このマンデートがあったからこそ,きわめて厳しい交渉であったにもかかわらず,COP 3において京都議定書が採択されたのです.したがって,その意味は非常に大きく,とくに何らかの「具体的な内容やタイムスケジュール」が入ったものに合意することができるなら,それは国際交渉の大きな進展を意味します.

それでは,実際にどのようなテーマが考えられるでしょうか?

昨今の公式・非公式の国際交渉をみるかぎり,それは「将来の枠組み」をテーマとするものになる...可能性が高いと思われます.しかしながら,実際の交渉を長年みている目から見ると,「発展途上国を京都議定書の数値目標の枠組みに組み込む新たな枠組み形成を何年までに行う」というような合意は,まだまだ時期尚早と言わざるを得ません.実際は,「そのような方向に向けた交渉を何年から『はじめる』」というようなタイムスケジュールを設定した合意が考えられますが,それでもかなり難しいでしょう.先進国が,その「対価」としてかなり具体的なものを出せれば話は別かもしれませんが,いまのところそれも考えつきません.

わたしは専門家としての目から見て,モントリオール・マンデート(仮称)のコア部分は,

あたりが,現実的な線かな,と思っています.これは,今回のCOP/MOP 1から(2005年中に)議論を「始める」ことが,議定書にスケジュールされています(数値目標の記載されたAnnex Bの改正という形となります.対象国の枠が広がるわけではありません).その「終わり」を規定するわけですね.「終わり」がないと,交渉はずるずる延びてけっして決まらないでしょう.

これにも,二つ考え方があり,ひとつは2008年前に(COP/MOP 3において)行う,という考え方です.COP 1においてCOP 3という形で京都議定書が合意されたように(実はこれは気候変動枠組条約にすでにスケジュールされていたのですが),あるいはCOP 4のブエノスアイレス行動計画でCOP 6がターゲットとされたように,2年後のCOPで,かつ第1コミットメント期が始まる前というのは,タイミング的にもなんとなくありそうな線ですね.

もうひとつの考え方は,ブッシュ政権後の米国政権をスコープに入れた考え方でしょう.ブッシュ後の政権は,2009年からですので,2009年末のCOP/MOP 5がそのターゲットとなります.米国が第一コミットメント期の目標スキームの中で京都の枠組みに戻る可能性は,誰が大統領になろうとも皆無といえるでしょうが(現状で排出量が京都目標をはるかにオーバーしています),第二期の場合は大統領次第では可能性がありますから.この場合,市場に対して将来の「不確実性」は遅くまで残ることとなりますが,将来の「希望」はつなぐことができますね.

加えて,わたしとしては

という形の決定を期待したいと思っています.

実は,このような途上国の自主参加条項は,京都議定書の最終ドラフトまで生きていました.それが,交渉の最後の最後で,途上国への根回しの時間不足のために排出権取引条項とのバーターとして,消し去られることとなりました.本来,途上国の中の有志が(たとえばアルゼンチンはそれを願っていました),自ら先進国と似たような目標を受け入れることは,環境面その他の観点から望ましいことのはずです.しかしながら,G77+Chinaという途上国グループはそれをグループの団結をくずすものとして嫌っていたわけです.

このような条項が復活すれば,韓国やメキシコなどのようにOECDなのに途上国扱いの国,アルゼンチンやカザフスタンのように先進国グループに加わりたい国が先鞭を付け,マレーシアのような高所得水準諸国に対する圧力も徐々にくわわるでしょう.

みなさんも,どのようなモントリオール・マンデートとなりそうか,あるいはなってほしいかを,考えてみられてはいかがですか?

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2005年11月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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