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Last updated: 2007.01.01 

環境税の限界と排出権取引

環境省が,10月25日に「環境税の具体案」 を提示いたしました.今回はこれを題材に,環境税とはどのような性格の政策措置か?ということを考えてみましょう.今回の環境省提案のデザインの特徴は,

などとなっています.

この「具体案」に対し,さまざまな意見を言うことはできます.たとえば,

などのポイントを指摘することができるでしょう.

この「具体案」は,本来の「炭素含有量に比例」し,「すべての排出に課税」し,「価格効果による削減」といった(経済学的な意味での)「炭素税の理想像」とは,大きく異なったものになっています.悪い言い方をすれば,この具体案は,各方面への「配慮」を行った結果,まず価格効果を狙うということは早々にあきらめ,次いで税収を効果的に温暖化目的に充てるという点もあやふやになり(もともと使途のデザインは早々にあきらめていたようですが),下流課税という環境マインド的な側面もあきらめざるをえなかった...ということでしょうか.環境税を「導入すること」自体が,目的化しているような感じですね.

しかし,各方面への「配慮」は,「課税措置」を「温暖化対策」に用いるにあたっては,ほとんど不可避です(これは実態が調整官庁である環境省でなくとも免れません).すなわち,制度デザインが,各種の「外的な状況」,すなわち政治家の意向,財務省の意向,業界の意向などに非常に大きく影響されると言うことです(家庭の意向は入っていないような気がしますね).あえてその分析の評価は行いませんが...

1990年ころから動いてきた欧州の炭素税・環境税も,税体系を間接税にシフトするという税制改革のツールとしての側面が強く,一般財源化や,エネルギー多消費産業への減免措置がデザインの主要部分でした(さすがに運輸用燃料を減免する制度はなかったと思いますが).わたしも,環境税のデザインの最重要部分は,「どうエネルギー多消費産業に減免措置を導入するか?」と「税収の使途方法」であると分析 してきました.

要は,税金という手法は,このような外的状況に大きく影響される,ということであり,最終的目的を「環境面」に置くのでしたら,デザインの仕方によって大きくその効果は影響を受けざるをえない,ということです.

一方で,キャップ・アンド・トレード型排出権取引制度の場合は,ポリティカルな側面は「アロケーション」すなわち数値目標設定の箇所に集約され,それは「総排出枠とは無関係」にデザインできます.言い換えると,環境的側面は,政治などのどろどろとした側面に影響を受けにくい...ということができるでしょう(最初に総排出枠を設定すればいいわけです).

これらの各政策手法の「特徴」を活かした上で,政策措置の有効なポートフォリオを組んでもらいたいものです.

なお,2002年2月のナットソースジャパンパンレターにも「排出権取引と炭素税」というタイトルで「公平性」や「負担の分担」という視点から分析を加えています.よろしかったらこちらも ご覧ください.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2005年12月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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