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Last updated: 2007.01.01 

モントリオールの将来枠組みの議論を振り返る

モントリオールにおけるCOP 11,COP/MOP 1が終わりました.今会合を持って,正式に議定書が実施段階にうつされ,遵守委員会やJI監督委員会なども設立されました.

サイドイベントでは,とくに「排出権市場」におけるビジネスに関するものが多く,EU ETSもCDMも,もはや現実に「動いている」ということを実感された方が多いかと思います.問題は,それが日本の企業の意志決定という点で,きちんと経営層に伝わるか?という点でしょうか(参加された方の責任は重いですね).

さて,今回は,今モントリオール会議における中心課題であった「温暖化の国際的な将来枠組み」に関する議論をすこし振り返ってみましょう.

まず,なにが決まったか?という点をおさらいしてみましょう.なお,今回の会合の関連決議はすべて http://unfccc.int/meetings/cop_11/items/3394.php にあります(マラケシュアコードも含まれています).新聞報道などは「いいかげん」ですので,興味があるトピックスに関しては,きちんと決議文書を読むようにしましょう.

関連決議は2つあります.ひとつは,議定書3条9項にからむ点で,「先進国の2012年以降の数値目標設定」に関する点です.これは途上国にコミットメントを拡大する話ではありません(某日本はそれをこの場で主張していたようですが).もうひとつは,議定書ではなく,気候変動枠組条約の下での話で,これは途上国を巻き込もうとする話です.

まず,議定書3条9項に関する点は,以下の通りです:

条約の下での話は,COPプレジデント(カナダの環境大臣)のイニシアティブで,トップダウン的に持ちかけられたものです.その内容は,以下のようなものとなっています.

さて,これらをどう評価すべきでしょうか?

ひとつは,あまり具体的な(2年後といった)デッドラインが設定されなかったことがあります.交渉途中の経緯や途上のテキストなどを見る限り,すこしずつ後退していったという判断もできるかもしれません.議定書に関しては,COP/MOP 2に予定されている「議定書の見直し(レビュー)」(第9条)に関する議論を行うことは,時期尚早ということで意図的に避けられたようです.

COP 1で議定書への道筋が付けられたのと対照的だった理由としては,当時のようなリーダーシップをとれるカリスマ性をもった人材不足(エストラーダの復活が期待されます),交渉担当者が,もはや昔のことを知っている人が少なくなった… ということが挙げられるでしょう.

ただ,最大のポイントは,「絶対に反対の意思を貫き通す米国ブッシュ政権」の存在に尽きるかと思われます.

議定書の第2コミットメント期に米国を引き込むには,新政権に交渉に加わってもらわなければならず,それにはCOP/MOP 5まで待つ必要があります.

一方で,条約の下での交渉においては,米国が途上国側で反対する側にまわるため,どうしても具体的な話には持ち込めません.

実は,交渉担当者の間で,このような漠とした決議にもかかわらず,一種の達成感があったのも事実のようですね.これは,おそらくこのような米国の頑なな態度の状況下でも,それなりの道(MAP: Montreal Action Plan)を設定することができた… ということなのでしょう.

さて,今後,どのような方向で「対話」を進めていくべきか?という点を考えてみましょう(第2期の「先進国」の目標の話も並行して議論されますが,それとは別の話です).すくなくとも,条約にとってかわるような代替的な枠組みはあり得ない… ということを理解しなければなりませんね.

「対話」に関しては,ぜひ,技術に関して,何らかの「物理的指標」を作成するようなプロセスを設けたいものです(達成しなければならないベンチマークとは異なります).GHG排出/吸収のインベントリーだけでなく,各セクターや技術における「原単位」を調査・報告し,それに関する自己分析を,国別通報において行うようなプロセスを導入してはいかがでしょう?他と比較することで,自国の対策を進めるための格好の材料提供になります.ヤードスティック型の競争原理もはたらくかもしれません.

すでに条約では,先進国の国別通報でIn-Depth Reviewというプロセスが動いています(わたしもすでに3回関わっています).途上国で導入するのが難しければ,途上国全部をいっせいにレビューするようなプロセスでもいいでしょう.IEAを巻き込めば実効性のあるものとなるでしょう.条約の技術移転の議論とのリンクもはかれます.

そして,実は米国ブッシュ政権も「技術」という点に関しては,ポジティブな面があるのです(米国DOEからIEAに移ったDixon氏をうまく活用できるでしょう).いかがでしょうか?

もうひとつは途上国の巻き込み方です.ロシアが3条9項で最後にゴネた「途上国の自主参加」は,「現状で数値目標を課されていない国」と言い換えて,COP/MOP 2で予定されている第9条「議定書の見直し(レビュー)」の議論に入れ込むことが可能かもしれません(もう忘れられたかもしれませんが,議定書交渉テキストの最後までそれは「あった」のです).わたしが密かに期待していた「ベラルーシュの自己申告目標」は,おそらくベラルーシュが正式に次回のCOP/MOP 2に申請することになるでしょう.事前にカザフスタンやアルゼンチンなどのその気のある国や韓国のように先進国の自覚のある国に根回しをして,ちゃんとひとつの「グループ」を形成させることができれば,ひとつの勢力となります.自分でやりたい,ということですので,それに反対するのも変な話ですから,合意される可能性は高いと思います.

ぜひ,日本政府には,「戦略的な」対応をお願いしたいものです.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2006年 1月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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