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Last updated: 2007.01.01 

プログラム型CDM: 新たなCDMの可能性

モントリオールにおいて,CDM理事会からCOP/MOPのガイダンスのパラ20は以下のようなものでした:

Decides that a local/regional/national policy or standard cannot be considered as a clean development mechanism project activity, but that project activities under a programme of activities can be registered as a single clean development mechanism project activity provided that approved baseline and monitoring methodologies are used that, inter alia, define the appropriate boundary, avoid double-counting and account for leakage, ensuring that the emission reductions are real, measurable and verifiable, and additional to any that would occur in the absence of the project activity;

要は,ホスト国「中央/地方政府の政策や基準設定」だけではCDMプロジェクトとしては不適格だが,「プログラム型」活動であれば,(もちろん普通のプロジェクトと同様に方法論が承認されなければなりませんが)CDMプロジェクトとなりうる,ということです.それではいったい,この「プログラム型」CDMとはどのようなものでしょうか?どのような新しいCDMのタイプを表すのでしょうか?

いままでのCDMプロジェクトは,そのほとんどが,いわば「プラント型」あるいは「サイト型」でした.たとえ,GHG削減が不特定多数で行われるとしても,プロジェクト「活動」自体は,何らかのプラント建設やリハビリといったいわば「集中型」と言えるでしょう.

ちなみに,不特定多数で削減が行われる例は,たとえば,風力発電のようなグリッド連系再生可能発電所建設プロジェクト(グリッド上のどこかの火力発電の焚き減らし効果がある),バイオディーゼル製造プロジェクト(多くの自動車において通常のディーゼル燃料利用を代替)などがありえます.

さて,ここで述べようとする「プログラム型」CDMプロジェクトは,これらともいささか異なったものです.すなわち,工場やプラントなどは存在せず,何らかのプログラム活動のみが存在するわけです.その意味で,かなりの「発想の転換」が必要かもしれません.

一番考えやすいのは,(得られるであろう)CERを原資とした「補助金プログラム」です.この場合,当然CERがなければそのプログラムは成立し得ないわけですから,プログラム自体の追加性は明らかと言えるでしょう.

ひとつの例として,日本電機工業会のプロジェクトとして,通常の市場における「電球→電球型蛍光灯」への転換プログラムがあります.電球型蛍光灯は消費電力が通常の電球の約1/6の省エネ型です(寿命も6倍程度あります).もちろん,電球一個を電球型蛍光灯に交換しただけでは微々たるもので,それがかなりの数集まってはじめてCDMプロジェクトとなるわけですね.

この「CERを補助金の原資とした電球型蛍光灯普及促進DSMプログラム」の場合,方法論的に難しいのは,特に次の2点です:

最初の点は,「個々の交換」トランザクションの追加性ですね(プログラム全体の追加性とは別の概念になります).第2点目は,電球型蛍光灯を平均どのくらいの時間使用するか?という点にかかわってくるわけですね.

これらの点は,けっして簡単ではありませんが,工夫次第で,解決できる問題だと思っています(せっかくですので,頭をひねってみてください).逆に,これらを解決できれば,この手のプロジェクトがCDMとなりうることになります.

電球型蛍光灯の場合も,その他の場合もそうですが,中国をはじめ,そのポテンシャルは非常に広範で大きなものとなっています(一方でアフリカのソーラークッカー普及のような小規模CDMも可能ですね).ある都市や地方で成功すれば,それを別のところにコピーすることはそれほど難しくないでしょう(ただ成功させるにはそれなりのノウハウが必要でしょうが).

プログラムの運営は,先進国の投資家の最初の投資を原資にプロジェクトをスタートさせれば,(補助金額をうまくデザインすれば)プロジェクトはあとは「自律的に」回っていきます.拡大再生産も可能でしょう.また,いったん動き出せば失敗の確率は低いでしょうから,翌年にはCERが獲得できます.

さらに特徴的なのは,このようなプロジェクトは,直接,発展途上国の住民をターゲットとすることです.電球型蛍光灯は主として都市域かもしれませんが,より貧しい農村域をターゲットにしたプログラム型CDMをデザインすることも可能です.これらの場合,最大の受益者は,補助金を受け取る住民であるという点も,すばらしいですね.まさに「クリーン開発」を実現化しようとするものと言えるでしょう.

プログラム型CDMは,いろいろ応用が効きますので,ぜひ,いろいろ考えてみてください.

[この文章は,ナットソースジャパンレター 2006年 2月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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