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Last updated: 2008.6.25

2013年以降の先進国の目標に関する考察

バリ・ロードマップのおさらい

昨年末のバリ会議においては,「バリ・ロードマップ」として,2009年末のコペンハーゲン会議で,次の2点に関して大きな決定がなされることとなりました.

そのひとつが,

もうひとつが

ですね.断じて,後者のみが決まったわけではなく,日本にとってはむしろ前者の方が意味が大きいでしょう.京都議定書が期限切れとなってしまうことは断じてない,と言うことを強調しておきましょう(制度の問題です.主観ではありません).

2013年以降も,先進国に関しては現在の京都型の排出絶対量に対する数値目標が設定されます.これは,第2期の京都議定書の下では明らかですが,京都議定書の傘下にない先進国に対しても,同様の措置がとられるというのも,バリの大きな成果でした.こちらは後者に相当します.


数値目標のみかけの数字

それでは,数値目標とは,どのようなものがありうるのでしょうか?今回は,この点に関してすこし考察をしてみましょう.

福田首相が,ダボス会議で「日本の数値目標」に関する何らかの発表を行うという報道があります.「基準年」を1990年ではなく,2000年にすることを提案するという話のようです.

バリでは,京都議定書のキャップ・アンド・トレード型制度自体には手を加えないことが追認されました.すなわち,各国には絶対排出量に対して,事前に数値目標が設定されることとなります.ここで,基準年を何年にするか?というのは,どのような意味があるのでしょうか?

物理的(環境的)には,とくに意味はありませんね.たとえば年間10億トンという「トンで表した目標の数値」だけが意味をもつわけです.1990年比マイナス17%という数字と,2000年比マイナス26%という数字は,日本の場合は同じ意味を持ちます(これが年間10億トンの場合です.この程度は覚悟した方がいいでしょう).

ですが,「みかけ上」2000年比で表した方が,ずっと厳しい目標にコミットしたとみられるということですね.逆にいえば,同じパーセンテージの削減量であるなら,2000年比の方がずっと削減量が少なくて済むわけです.

これは,国によっても状況が異なるため,かなり政治的意味合いが異なってきます.京都の時にも,日本は「見かけの数字」を,欧米と同レベルにするため,当初は反対していた吸収源を取り入れることにした経緯があります.悪く言えば「数字合わせ」をするわけですね.

ところで,余談ですが,どうして1990年が基準年に採用されているのでしょうか?それは,1992年の気候変動枠組条約採択時,最新の実績値が1990年であったことに起因するようです.わたしは,京都会議の時,第一回石油危機の1973年を基準年に選ぶべきと主張しました.その年からどの先進国も省エネを始めたので,リーズナブルと思ったのですが...

ところで,2000年を選択すると主張するにあたっては,何らかの合理的説明が求められるでしょう.自分に都合のいい基準年を主張している,と思われては,(たとえそれが本当だったとしても)逆効果です.その意味では,わたしは1997年が妥当ではないか?と思います.京都議定書採択の年から,という視点です.

そもそも,どうして基準年という概念が必要なのでしょうか?たとえば(議定書Annex Bへの記載の方法として)年間10億トンというトン数だけでもいいはずです.であれば,恣意的な「みかけの数字合わせ」をしなくてすみます.先進国はすでに各年の「トン数」に関して,厳しい審査を経ていますので,制度運営上も問題がないでしょう.

その一方で,この場合重要となるのは,その「トン数」をいかに決めたか?という点(のみ)です.どのようなクライテリアに基づいて,各国の数値目標のトン数を決めたらいいのでしょうか?

ここでの重要な視点は,各国の状況が非常に大きく異なっている,という事実です.OECD間でもそうですし,経済移行国を含めるとなおさらです(それがホットエアーという変なものを生んでしまった元凶です).

そのような点を踏まえた上で,「それなりにリーズナブルな」数値目標をどうやって決めたらいいのでしょうか?紙面も尽きたので,これは今後の宿題としておきましょう.みなさんも考えてください.今年末のポーランドでの会議あたりからインテンシブに議論されるでしょうから.


[この文章は,ナットソースジャパンレター 2008年 2月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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