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Last updated: 2009.11.27

Copenhagen会議の事前見通し

いよいよCopenhagen会議が目前に迫ってきました.悲観的な報道などがよく耳にされるところですが,COP 1 の準備会合である INC 10 から気候変動の国際交渉をみてきたわたしの見方を簡単にご紹介いたしましょう.

まず,全般的にわたしはみなさんより楽観的でしょう.いままでも気候変動枠組条約の交渉時,京都議定書の交渉時,京都議定書のルールの交渉時など,きわめて厳しい交渉がありました.どの時点においても,交渉の進展の遅さから,きわめて悲観的な報道がなされてきたものです.しかしながら,結果はどうだったかというと,それなりにきちんと成果を上げてきたという事実をわたしは重視しています.交渉をまとめ,前に進んでいきたい,という各国代表や首脳の意思を,わたしは信じています.


マンデートを超えて?

次に,これもわたしの経験から,「マンデートになっていること以上のことは決まらない」ということを挙げておきましょう.通常,国際交渉は,ある時点で「いつまでに ... に合意する」というマンデートの決定を行ってから,そのデッドラインに向けての交渉が始まるわけです.

たとえば,COP 1 では,「1997年末までに先進国に対する数値目標の入った新しい国際協定に合意する」という いわゆるベルリンマンデートが決まりました.それが京都議定書という形で結実したわけですね.

ところで,Copenhagen会議のマンデートは何でしょうか?しばしば,ポスト京都という言葉がメディアで踊りますが,それはミスリーディングです.今年1月号のわたしの Poznan会議報告を見返していただいてもわかると思いますが,決めるべきマンデートとして設定してあることは,

     A. 先進国の京都議定書第2期(2013年以降)の数値目標

     B. 途上国を含んだすべての国の新しい行動

です.

A. に関しては,京都議定書そのものに書いてあり,そのための交渉プロセス AWG-KP が,モントリオールでの COP/MOP 1 で決定されたわけですね.

B. に関しては,COP 13 の Bali 行動計画での決定に基づくもので,バリにおいて AWG-LCA というそのための交渉プロセスが動き出しました.

ということで,この2つの交渉プロセスをマージして,新しい国際条約による枠組みを作る... ということは,けっしてマンデートにはなっていないわけです.したがって,「期待」することは勝手ですが,(途上国の根強い反対がある中で) コペンハーゲンでそれが決まる可能性はきわめて小さいと思われます.最近になって,AWG-LCA議長,事務局長,国連事務総長などが,新しい国際協定ができる可能性はないであろう,という発言を行ったりしていますが,おそらくそれは,合意できる見込みがない「あらぬ期待」の部分に交渉のリソースを割くのではなく,実質的な中身の議論をしなければならない... というメッセージかとわたしは理解しています.


コペンハーゲンで期待したいこと

では,はたしてコペンハーゲンで何が期待できるのでしょうか?

AWG-KP は,主要各国の自主的な数値コミットメントのレベルが出そろってきましたので,わたしは合意は十分に可能だと思います (議定書 Annex B の改正という形をとります).最低でもそれらの数字を並べればいいわけですから.CDMのリフォーム,GHGsの種類を増やすこと,GWPの値の改訂などは,COP/MOP決定としてなされるでしょう.

すでに先進国としての扱いとなることに腹をくくっている韓国や,中央アジアの国々等を,議定書 Annex B の改正として組み込むこともなされるでしょう.議定書本体の改正の中で,もし 非 Annex B 国の自主参加条項が導入できたとしたら,それは非常に大きな進展だと思います.セクターCDMなどの クレジット・メカニズムの新設の合意ができれば御の字ですね.

一方,AWG-LCA は 5つのブロック [shared vision, mitigation (先進国, 途上国, REDD), adaptation, technology, finance] に関する合意です.繰り返しますが,新しい国際協定の合意はマンデートとなっていませんので,おそらく法的には COP決定となるでしょう.

法的なステータスはともかく,問題は「中身」であるわけです.日本やEU (の数値目標) に関してはすでにイシューではなく,問題は途上国と米国であるわけですね.

米国 に関しては,絶対量数値目標を受け入れることは宣言するでしょう.2005年比17%減というニュースも流れています (動いてきましたね!).京都の経験からは,議会の結果を待ってから... という判断が順当なところかと思いますが,議会との調整や交渉促進の面を踏まえた上での政治判断かと思います(交渉を前進させるカードとしてさらなる削減をコミットする可能性はあるでしょう.ちょうどオバマ大統領のノーベル平和賞授与式や 彼自身の交渉への参加の可能性もあります).加えて,CDMなどを 非締約国のままで利用することができる... というような実質上の「数値目標+京都メカニズム」への道ができれば,これは大成功かと思います.

途上国 に関しては,中国やブラジルなど,主要国のいくつかは,(国際協定の中ではなく) 独自目標 (原単位目標など) をコミットしてくると期待されます.これはかなり大きな前進ですので,わたしはコペンハーゲンの成果としては十分かと思います.もちろん,NAMA などの概要は決まってくるでしょう.

そして,コペンハーゲンの後につながる「マンデート」として,どのようなものに合意できるか?が注目点となります.コペンハーゲンのマンデートとなっている先進国の目標に関する合意はできるでしょうから,わたしは COP 15 bis が開かれる可能性は少ないと思います.むしろ 2年後の COP 17 に決めるべきこととして,新メカニズムの詳細ルールなどの他に,途上国の新たな枠組みに関係したもの (たとえば途上国のカテゴライゼーション) が決まれば,それは素晴らしいことですね.

どうせ,会議は二週目にならないと動いてこないでしょうが,コペンハーゲンでの各国大臣・首脳の政治判断に期待したいと思います.




最後に,Copenhagen会議の直後 (翌週の火曜日である 12/22) に,「何がコペンハーゲンで決まったか?」,「その結果をどう読めばいいのか?」などに関する 3時間にわたるセミナーを PEAR および クライメート・エキスパーツ で開催します.かなりきちんとしたものとしたいと考えていますので,ぜひご参加ください.詳細は PEAR の Web (http://www.pear-carbon-offset.org/) をご覧ください.



[この文章は,ナットソースジャパンレター 2009年 12月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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