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Last updated: 2010.05.04

Copenhagen Accordの役割と将来の方向性

前回,「コペンハーゲン会議の結果を踏まえて」と題した報告をしましたが,今後を考える上で,コペンハーゲン・アコード をどう解釈すればいいだろうか?という点を考えてみましょう.

コペンハーゲンアコードは,ボランタリーベースであるからこそ,即効性が期待できます.

今後注目されるのは,まず1/31の〆切りまでにどれだけの国がどのようなものを出してくるか?という点でしょう(掲載時点ではわかりますね).ただ途上国に関しては,準備期間が短かったこともあって,遅れる国も多くなるような気がします.

次のステップで注目されるのは,6月の補助機関会合です.南アフリカでの世界的イベントに交渉担当者は気もそぞろかもしれませんが,ここで,技術メカニズムや資金の運用機関など,アコードで示されている制度設計のベースができ,メキシコで立ち上げることができる用意ができたなら,非常に大きな成功でしょう.

ところで,コペンハーゲンアコードは,いつまで有効なのでしょうか?世界は何をベースに動いていくのでしょうか?先進国も含めて,ボランタリーな目標や行動計画をベースとした社会となるのでしょうか?

わたしはそうは思いません.

まず,AWG-KP,AWG-LCAの交渉は,メキシコに引き継がれます.6月の補助機関会合で,また交渉会議が間に挿入されるかもしれません.過去,(EUの強固な姿勢で失敗に終わった)ハーグ会議(COP 6)が,ボン会議(COP 6.5)で「政治的コア部分」に合意し(ボンアグリーメント),マラケシュ会議(COP 7)で全体のパッケージを採択できたように,今回のコペンハーゲンアコードが,当時のボンアグリーメントの役割を果たすのではないか?と期待しています.

少なくとも,「いままでのAWGsの結果+コペンハーゲンアコード」が,今後のAWGs交渉のベースとなるでしょう.

ボランタリーにプレッジするとはいえ,排出権市場の重要性を認識している先進国は,コペンハーゲンアコードの下で提出する自主目標を「守らなくてもよい目標」とは見なさないでしょう.米国も,法律ができ次第,条約の下で絶対量数値目標スキームを負うと思われます.課題は,彼らがCDMにアクセスできるようなCOP決定ができるかどうか?でしょうか.おそらくそれに強く反対する国も少ないと思います.

途上国に関しては,ボランタリーベースで動いてくるでしょう.資金へのアクセスの点もありますので,最終的にはほとんどの途上国がサインしてくると思います.BASICと呼ばれるブラジル,南ア,インド,中国のグループと,他の途上国との立場の分化がどれだけ進むかノ は見所ですね(分化したくないため南南資金援助の動きもあるようです).

そして,きちんとメキシコで二つのAWGsが結論を出せたなら,もはやコペンハーゲンアコードの役割はそこで終わりです.アコードの内容は,二つのAWGsの結論に(場合によってはアップグレードされた形で)吸収・上書きされることとなります.

もし,メキシコ(2010),南ア(2011),韓国 or カタール(2012)の会議を経ても,AWGsに結論が出なかったら(そういう可能性はかなり低いとは思いますが),そのときは,(国際交渉の通例として)おそらくコペンハーゲンアコード(もしくはそれの改訂版)を,「暫定的に運用する」という形で,動いてくると想定されます.

すなわち,先進国の絶対量数値目標の仕組みや,どの国もすばらしいメカニズムと思っているCDMなどは,2013年以降も運用・強化されていくでしょう.

最後に強調しておくべき点は,企業などが規制されるのは,国際的フレームワークではなく,国内規制であるという事実です.そして,国際的な排出権市場は,この国内規制制度もしくはそれらがリンクしたものが規定してくるということです.

日本の一番の不幸は,数値目標の水準に関するような点ではなく,むしろ,いつまで経ってもはっきりした規制の方法や政府のビジョンが打ち出されないことにあると言えるかもしれません.不確実性が高い中では企業は意思決定や戦略をたてにくいものです(とくに日本企業はリスクを背負うことを嫌がります).一方で,将来がはっきりしたのなら,(たとえそれが好まないようなものであったとしても)日本の企業はきわめて優秀に,それに向かって対策を採っていくことができる能力を持っています.



[この文章は,ナットソースジャパンレター 2010年 2月号に寄稿したものに,少し変更を加えたものです]



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